理事長挨拶

 

 

理 事 長 挨 拶

 

臨床法学教育学会理事長・須網隆夫(早稲田大学)

 

 本年3月の理事会において、今期からの理事長に選出された、早稲田大学の須網でございます。理事長として、みなさまにご挨拶させて頂きます。

 さて、法科大学院制度の混迷はますます深まり、さらに募集停止を決定する大学院が続き、学生募集を続けている法科大学院数は、開設時の半分を割り込んでいる状況です。このような状況は、全ての法科大学院の体力を蝕み、司法試験合格率の上昇を目指す以外の教育には力を集中できない状況が生じています。本学会は、臨床法学教育の発展を通じた、日本の法曹養成制度の絶え間ない改善を目指している団体ですが、法科大学院の現状が、本学会の力量不足を示すとともに、本学会の活動にも否定的影響を及ぼしていることは否定できない事実であると思います。

 もっとも、各法科大学院では、なお法曹を志す熱意にあふれた多くの学生諸君が、日々学んでいます。彼らに対し、果たして我々は、十分な法曹養成教育を提供するために必要な努力を行ってきているでしょうか。全体状況の困難を理由に、あるべき教育を提供する努力を怠っているのではないかを改めて反省する必要があるように感じます。

 本学会の会員として、そして理事長として、私は、現在以下のことを考えております。

第一に、どんなに困難な状況の中でも、臨床法学教育を実施することは可能であると思います。但し、そのためには、いわゆるアメリカ型のクリニック教育の形態に捉われず、臨床教育の本質が何であるのかを理解した上で、それを日本の現状で可能な形に再編成する作業が必要です。第二に、文科省が現在進めている法学部と法科大学院の連携は、法科大学院制度の理念の放棄であるとともに、その実効性にも疑問があります。しかし他方で、法学部における臨床法学教育発展の新たな可能性をもたらすものでもあります。本学会としては、積極的に法学部における臨床法学教育の推進を提言するために、その形態・内容を議論すべきと思います。第三に、法曹養成教育の将来は全く不透明です。法科大学院制度が維持されるのか、それとも法学部に事実上吸収されるのか、そもそも大学における法曹養成教育自体放棄され、司法試験と司法修習という旧来モデルに回帰するのか、全く分かりません。このような混迷した状況の中で、将来のあるべき法曹養成制度への手がかりを見出していくことも、本学会の使命であると思います。

 法科大学院協会の理事長である大貫・中央大学教授は本学会の会員であり、事務局長の石田・早稲田大学准教授も本学会の理事です。協会とも連携を密にしながら、これらの課題に取り組んでいければと思います。

 

(2018年6月26日)