理事長挨拶
理 事 長 挨 拶
臨床法学教育学会理事長
米田 憲市(鹿児島大学)
臨床法学教育学会のホームページをご訪問いただき、ありがとうございます。2021年4月より、第6期の理事長を拝命した鹿児島大学の米田です。着任に際し、当学会の紹介を兼ねて、ご挨拶させていただきます。
当学会は、設立以来13年、一貫して現状への批判的な視座を堅持し、法曹養成過程における臨床法学教育の実践的状況や理論的展開を中心としつつ、その背景となる法曹の責務やその養成過程の制度的展開に関心を持って、我が国社会の動向に視野を広げた議論をいとわずに、積極的な情報発信をしています。
法科大学院制度を中心とする法曹養成が始まって17年。法曹養成過程は、様々な模索の結果とは言え、制度的側面においてもその内実においても、平成の改革時に克服されたはずの司法試験という「点」による選抜の悪い面が再び強化されるという残念な方向にあります。さらにこの影響は学部教育を巻き込むいわゆる「法曹コース」の教育カリキュラムにも及んで訓化されつつあります。
ここで、司法制度改革審議会意見書の言う「司法を支えるにふさわしい質・量ともに豊かな法曹」の在り方を改めて問い、試験のための知識獲得に止まらない「専門職養成」にふさわしい経験を積む「プロセス」への視座を持つことが益々重要になっています。
図らずも法曹養成過程が持つべき理念の危機にあるこの過渡期に、コロナ禍によって社会生活全般が一変しました。法科大学院だけではなく、教育制度全体が未曾有の状況の下で展開されています。法曹志願者の社会認識も、将来彼らを必要とするであろう社会からの期待も、そこで直面する問題の様相も、そしてその解決のためのツールも、これまでと大きく異なっていくことは想像に難くありません。
臨床法学教育という実践が含むポテンシャルと当学会の取組みの到達点は、試験科目の学修とそれ以外という二分法を超えて、司法試験対策を含む法曹養成過程全体を、次の時代の要請によりよく応える法曹を生み出す、豊穣で価値あるものにできる道筋があることを示しています。
私は、この時期に理事長を担う者として、学問の運動性を改めて認識し、より充実した学会活動を展開してその情報発信に努め、広く交流を図ることがミッションであると考えています。
具体的には、年次大会はもちろん、リモートでのセミナーや映像配信を含めた情報発信と交流をいっそう充実させたいと思います。法律基本科目をはじめ様々な科目を担当されている先生方、他の分野の専門職養成に関わる先生方、すでに法実務に就いている方で後継者養成に関心を持つ方にも、是非参加していただきたいと思います。そして、なにより、若手法曹のみなさんに、この学会に参加していただきたい。そのための工夫をしたいと思います。
本学会を運営するに当たり、法科大学院協会、日弁連法科大学院センター、法実務技能教育教材研究開発コンソーシアム(PSIMコンソーシアム)、一般社団法人法曹養成ネットワークなどの関係組織、文部科学省をはじめとする関係官庁、経済団体や専門職組織、そして各法科大学院や法学系教育課程の先生方との連携や協力を念頭に置いて、あるべき法の支配への力のある動因となるよう、皆様と共に協働できたらと考えています。
微力ながら力を尽くします。ご支援、ご協力をお願い致します。
(2021年6月20日)